先日、こんな訴えをした患者さんがいらっしゃいました。先生、右の上の歯が痛くて以前その歯を治 療していただいた先生に相談したんですけど。「あなたの歯は痛くありませんし治療するところはありません。」と言われてしまったと。 その話を聞いて私はすぐに自分の母の話を思い出しました。私の母が「足がしびれて歩けない」と病院に行って訴えたところレントゲンや検査をした後に、「なんでもありません」とそれで診察が終わってしまったとのこと。どうして、こんな漫才のようなことが起こるのでしょうか? 先の話は、最初に歯科医の自己防衛が先立ってしまったのでしょうか?患者さんはあくまでも、治療した先生にクレームうを言いたいのではなく、痛みで困っていることを素直に訴えているので、ここで痛みがあると言うことを受け取るところからしか物語は始まらないはずです。そこのスタートのところからコミュニケーションが成り立たない不幸はどうしたらいいのでしょう。 次に母の例から言うと訴えを聴き、どうして「しびれがあるのでね、検査したのですが私にはなぜしびれがあるのかわかりません」と言えないのでしょうか。現在の医学が人体のすべてを解明している訳でもなく、お医者さんや歯医者さんも人間の体のことをすべて理解しているはずがありません。そんなことは患者さんだって知っているはずです。 このような話はよく私どもも耳にし、例は枚挙に遑がないです。そこに潜むのは、医療従事者の資質や教育の問題でしょうか、話を聴くことができないシステムにあるのでしょうか?最初に自分自身を守らなければならないこの世が悪いのでしょうか?どちらにしろ今日も不幸な患者が生まれています。そしてそれを感じている多くの人は沈黙し我慢し次の医療機関や整体、針灸などの治療院へとさまよっているのではないかと思っています。